相続が発生すると銀行口座が止められてしまいます。
そのため、口座が止められる前に預金を引き出しておいた方が良いという話を聞くことがありますが、
凍結前の預金引出しについてはリスクもあります。
今回は、この相続時の預金の引き出し方についてご説明したいと思います。
相続が発生した場合、どのタイミングで口座が使用できなくなるかというと、
親族などが、金融機関に、口座名義人が亡くなったことを伝えたときからです。
死亡届を役所に提出したことで、銀行口座が連動して凍結されるわけではありません。
一度口座が凍結してしまうと、相続手続きが完了するまでは預金を引き出せなくなってしまいます。
相続手続きは、一般的に長期間になってしまうことが多く、
亡くなられた方の入院費や葬儀代、残された遺族の生活費など当面のお金が必要な場合には、
預金を引き出せず困ってしまうことになります。
そこで遺産分割前の預金の払い戻しという制度が設けられています。
これは遺産分割が終了する前であっても、預金の一定額を引き出すことが認められている制度です。
各相続人は、口座ごとに相続開始時の預金額の1/3のうち、
その払い戻しを行う相続人の法定相続分について払い戻しを受けることができる制度です。
同一の金融機関からの払い戻しは150万円までが上限になりますが、
複数の金融機関に口座がある場合は、金融機関ごとに150万円まで払い戻しを受けることができます。
この引き出した金額は、払い戻しを受けた相続人が取得するものとされ、
相続税を計算する際に調整されることになりますが、遺言などで預金を取得する方が指定されている場合は、
この指定された方以外の方は払い戻しを受けることができません。
この払い戻し制度には注意点もあります。
まずはこの制度を利用するためには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本など、
一定の書類を準備する必要があることです。そのため、相続手続の進行具合や、相続人の状況などによっては、
相続手続き自体を完了させてしまう方が早いケースもあるでしょう。
また、この払い戻し制度を利用すると、亡くなられた方の財産を相続することを承認したとみなされ、
相続放棄ができなくなる可能性があります。
これは凍結前に預金を引き出した場合も同様です。
相続人に多額の借金などがあり、相続放棄を検討している方は、預金の引き出しには注意が必要です。
この払い戻した預金や、凍結前に引き出した預金は、亡くなられた方の相続財産に該当しますので使い方には注意が必要です。
ほかの相続人とトラブルにならないよう、領収書などの証拠書類は必ず残すことや、
どのようなことに使ったかをメモなどで残し収支がわかるようにしておきましよう。
相続人間で無用なトラブルを避けるため、使途不明なお金が発生しないようにご注意ください。